2024.03.15

歯科衛生士の就職:社保完備とは 社保完備の歯科医院が良いの?

歯科衛生士養成校を卒業してこれから就職する学生さんは、求人票などに記載されている「社保完備」というのを目にする機会も多いのではないでしょうか?

学生のうちは親御さんの健康保険に被扶養者として加入している方がほとんどだと思います。4月から就職すると、この保険は自分で職場の保険に加入することになり、また、年金保険にも自分で加入することになります。

一般的に就職すると4つの保険に加入することになります。健康保険、年金保険、労災保険、雇用保険です。それぞれを解説します。

ちなみに・・福利厚生が充実しているほりい矯正歯科クリニックでは一定の条件に達すると、家族を受取人にした生命保険やがん保険にも加入します。

 

 

健康保険

病院などで治療を受けた際、高齢者を除き、自己負担分を3割とするのが健康保険です。一般的に歯科衛生士が加入すると考えられる健康保険は概ね大別して2種類あります。社会保険と国民健康保険です。では、自分で選択してどれかに加入することができるのでしょうか? そうではありません。就職先がどの保険が適用されているかによります。

 

健康保険(中小企業は協会けんぽ)

企業や公務員などでは一般的な健康保険です。歯科医院でも個人医院ではなく法人が設立している歯科医院(一部を除く)ではこの保険を適用している医院があります。これらの歯科医院は社会保険のうち中小企業が加入する協会けんぽに加入します。(ほりい矯正歯科クリニックもこの健康保険です。) 法人が保険料の1/2を負担し様々な面で給付があるため、一般的に最も福利厚生としての従業員の利益が多い保険と言えます。 

 

国民健康保険(多くの歯科医院は歯科医師国民健康保険;歯科医師国保)

個人で開業されている歯科医院に多い健康保険です。社会保険にはまだまだ劣るものの近年、出産手当金など面で給付されるものが増えているようです(特に東京都)。

まとめ

歯科医師国保(全国歯)と協会けんぽの違いを表にまとめました

歯科医師国保

協会けんぽ

傷病手当金

給付要件

入院した場合、入院1日目から支給

被保険者が業務外の事由による療養のため労務に服することができないとき

その労務に服することが出来なくなった日から起算して3日を経過した日から

労務に服することが出来ない期間支給される

給付期間

同一年度の疾病に対して90日を限度とする

同一の疾病・負傷に対して、支給を始めた日から起算して1年6か月を超えない期間

支給額

3種組合員(歯科衛生士や歯科助手) 入院1日につき1500円

1日につき、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する額(休業した日単位で支給)

出産育児一時金

被保険者が出産(妊娠85日以上の出産・流産を含む)した場合 支給額 1児につき 500000

同様

出産手当金

対象者

産前6週間、産後8週間において業務に服さなかった組合員

産前6週間、産後8週間までの範囲に業務に服さなかった健康保険加入者

支給額

1日につき 1500

標準報酬日額の3分の2に相当する金額

支給期間

90日を限度とする

業務に服さなかった期間

保険料免除

免除なし

産前産後休業と育児休業期間中

インフルエンザ予防接種補助

年度ごと1名につき3000円を限度に補助

補助なし(ほりい矯正歯科クリニックでは被扶養者を含め13.000円補助)

健診補助

2030代の加入者の関連項目

*子宮頸がん20歳以上 3400円を限度に補助

*一般健診35歳~74歳 費用18522円(税別)自己負担額7038円(税別)

*子宮頚がん検診20歳~38歳の偶数年齢 費用3400(税別)自己負担額1020(税別)

*一般健診に追加で受診できる健診

付加健診、乳がん検診、子宮頸がん検診、肝炎ウイルス健診

高額療養費

自己負担限度額は被保険者の所得に応じて異なります

同様

葬祭費

3種組合員 100,000

被保険者 50,000

歯科医師国保(滋賀県は全国歯科医師国民健康保険)と社会保険(協会けんぽ)の違いについて比較表を記載します。

*特に20代、30代に関連することが多いと考えられる、傷病手当金や出産手当金、出産時の保険料免除制度などで違い大きいようです。

*扶養に関する違いもありますが新卒歯科衛生士を対象読者としたため今回は取り上げていません。

 

 

 

年金保険 

一般的には65歳以降に年金を給付するものです。これには大別して厚生年金と国民年金があります。よく年金は2階建てや3階建てと言われますが、1階部分に相当するのが国民年金です。厚生年金はそれに上乗せするいわゆる2階期部分の年金です。

 

国民年金

1階部分の国民年金は学生などで加入を遅らせる手続きをした人以外、20歳以上の人が必ず加入するもので、個人医院では自分で月額16500円程度の保険料を納付するものです。(半額程度を補助する医院もあるようです。)

 

厚生年金

法人の設立する歯科医院ではここに2階部分の厚生年金に加入します。(ほりい矯正歯科クリニックのスタッフも厚生年金に加入しています。)厚生年金は1階部分である国民年金に相当する保険料も含め、法人が1/2保険料を納付しますので、単身者で標準的な年収の場合、将来受け取れる年金額は国民年金の場合と比較し2倍以上になります。50歳以上の加入者には年金定期便というのが毎年誕生日付近でやってきますが、この定期便には将来受け取れるであろう年金額が記載されています。私(院長 堀井)の場合も全期間国民年金に加入していたとした場合と比較して約2倍程度の年金が将来貰えると記載されていました。(厚生年金で良かった! 若いうちは気にしなかった年金ですが貰う年齢が近づくと気になります。)

 

また、国民年金の場合は自分で保険料を口座振替や金融機関等で納付するので給与からの控除はありません。厚生年金では自分で納付手続きをするのではなく、保険料は給与からの控除で納付するため、一見手取り給与が少なく見える場合もありますが、実は法人が負担する年金保険料を考慮すると、多くの給与に類似したものをもらっていると考えることもできます。また、先に記載したように控除額と同額を法人が負担していますから、従業員は見かけよりメリットがあり、控除後の手取り給与の多い少ないで給与総額の多い少ないを判断することは出来ません。

 

企業年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)

3階部分と言われるのは企業年金や個人型確定拠出年金と言われるものですが、企業年金は企業が独自に運用する年金なので、法人の設立する歯科医院でも企業年金がある医院はほぼないと考えられます。確定拠出年金は各自で加入するものですので年金機構のHP (https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/0722.html)を参照してください。

 

労災保険

業務中や決められた通勤路でけがや事故にあった場合に手当金が支給されたり、万が一死亡した場合に遺族に給付を行う保険です。これは、個人、法人に関係なく事業所であれば全ての従業員が加入することになります。従業員の負担はなく事業所が保険料を納付します。

 

雇用保険

雇用の安定のために加入する保険で、失業した場合に職業訓練をしたり失業給付を受けることができる保険です。これも、労災保険同様全ての事業所が加入します。歯科衛生士の初任給であれば月額1300~1800円程度が給与から控除されます。

 

これらのことから、すなわち「社保完備」とは 健康保険が社会保険(協会けんぽ) で 年金保険が厚生年金 である場合を「社保完備」としている場合が多いです。しかし、なかには健康保険が歯科医師国保でも「社保完備」としている場合もあるので注意が必要です。

 

*保険制度の中には介護保険制度もありますが40歳以上が加入する制度で、今回は新卒歯科衛生士を対象読者としたため取り上げていません。