2024.04.01

歯科衛生士国家試験の傾向と対策 矯正装置編

衛生士国家試験の対策と傾向 矯正装置編

衛生士国家試験が終わり新学期が始まりますね。

今年国試を受ける皆さん、国試対策へのスタートは切っていますか?

今回も前回に引き続き過去問から1問出しますので考えて見てくださいね!

今回は矯正装置に関する問題です

 

27回歯科衛生士国家試験より出題です。

 

矯正装置に関する出題

矯正装置の写真を示 す。

                

この矯正装置の作用する矯正力で正しいのはどれか。2つ選べ。

a 器械的                      

b 持続的            

c 機能的

d 間欠的

 

 

 

 

 

矯正装置に関する出題の解説

まず、この問題に出てきた装置はなにかわかりましたか?

そうです、アクチバトールですね。

さらに詳しく言うとⅢ級のアクチバトールです。

 

矯正装置には装置が持つ器械的な矯正力による器械的矯正装置と筋の機能力を利用する機能的矯正装置があります。

矯正装置による矯正力には間歇的、断続的、及び持続的矯正力がありそれぞれの装置によって異なります。間歇的矯正力は装置をつけている間だけ矯正力が働き、その他の時間には作用しないというように作用と中断が繰り返される力のことです。

アクチバトールは筋の機能力を利用する機能的矯正装置であり、自分で取り外しをする装置なので矯正力の作用様式は間歇的な力になります。

以上により正解はc、dとなります。

 

 

 

それではここでみなさんに質問です。

この問題に出てきた装置、Ⅲ級のアクチバトールについてどのくらい知っていますか?

聞いたことはあるけど、いまいちどんな装置か分からない。

そんな皆さんのためにまずはアクチバトールという装置について学びましょう!

 

アクチバトールってどんな装置? もっと詳しく

 

アクチバトールとはざっくりいうと、プラスチックと針金でできた装置です。

上の歯と下の歯の間にガボッと入る装置で、口蓋や舌側粘膜にも及ぶ大きなプラスチックの塊をくわえる感じです。。

分類としてⅡ級用(上顎前突)とⅢ級用(下顎前突)があります。

 

構造

床部(レジンの部分)と誘導線(ワイヤー)から成ります。

作用機序

アクチバトールは口腔周囲筋の機能力を歯に伝達、あるいは排除することによって作用します。

今回はⅢ級アクチバトールについての出題なのでⅢ級アクチバトールの作用機序について説明します。

Ⅲ級アクチバトールの適応は機能性の下顎前突の患者さんです。前歯と前歯を突き合わせることができない骨格性の下顎前突の方には適応ではありません。

下の写真を見てみると、誘導線はアクチバトール本体から上に向かってループが伸び、下に折り返して下顎前歯の唇面に接するようにつくられています。

下顎を前進させる口腔周囲筋の機能力をアクチバトール本体を介して変化させ、下顎前歯を舌側に向かって押す矯正力を発揮する。そのためには上の写真にあるように、下顎前歯を舌側に押す場合、装置を抵抗なく遠心に滑走させるためには下顎前歯部遠心にスペースが必要になります。そのスペースをつくることを誘導面の形成といいます。

 

 

 

矯正力について もっと詳しく

矯正力とは?

矯正力とは正しい位置に歯や顎を移動させるための力をいいます。

 

この矯正力は何を移動させるかによって以下の2つに分類されます。

  • 歯を移動させる矯正力:どのような力で移動させるかによって器械的矯正力と機能的矯正力に分類される。
  • 顎を移動させる矯正力:顎整形力

 

どうでしょう?文字だけだと分かりにくいでしょうか?
では、それぞれの矯正力について具体的な装置と一緒に理解していきましょう。

 

〇器械的矯正力とは?

ワイヤーやコイルスプリング、エラスティック、拡大ねじなどを用いて力を直接歯や顎骨に加える方法のこと。

Ex)ワイヤーやコイルスプリング、エラスティックや顎間ゴム、拡大ねじなど。

マルチブラケットのワイヤー

ワイヤー

オープンコイルスプリング オープンコイルスプリング

コイルスプリング

エラスティックチェーン

エラスティックチェーン

顎間ゴム、エラスティックゴム

顎間ゴム

拡大床装置

拡大ねじ(拡大床装置)

 

 

 

〇機能的矯正力とは?

筋肉の機能力を用いる矯正力のこと。口腔周囲筋の機能力を装置を介して矯正力として利用する、もしくは筋肉の力を排除することによって歯や顎の移動を行う力のことをいう。

Ex)アクチバトール、フレンケル装置、咬合斜面板や咬合挙上板、リップバンパーなど。

装置を介さないものには口腔筋機能療法(MFT)などがある。

Ⅲ級アクチバトール

アクチバトール

フレンケル装置

フレンケル装置

咬合斜面板

咬合斜面板

咬合挙上板

咬合挙上板

リップバンパー

リップバンパー

 

 

 

〇顎整形力とは?

下顎の骨が大きいとか上顎の骨が小さいとか、骨自体に問題がある成長期の患者さんに対して顎骨の成長をコントロールする力のこと。

Ex)上顎前方牽引装置、ヘッドギア、急速拡大装置、チンキャップなど。

上顎前方牽引装置 

上顎前方牽引装置

ヘッドギア 正面観 ヘッドギア 側面板

ヘッドギア

急速拡大装置

急速拡大装置

チンキャップ

チンキャップ

 

 

次に矯正力の作用様式について学んでいきましょう。

 

矯正力の作用様式について

 

1.持続的な力

矯正力が減衰していく程度が比較的緩やかで、矯正力の作用する時間が連続する力。

Ex)舌側弧線装置の補助弾線、コイルスプリング、エラスティックなど。

 

2.断続的な力

矯正力の減衰の仕方が急激で、比較的短時間で矯正力がゼロになる力。

Ex)拡大ねじ、ブラケットに結紮線を結紮した時の力など。

 

.間歇的な力

装置をつけている間だけ矯正力が働き、その他の時間には作用しないというように作用と中断が繰り返される力。

Ex)アクチバトールなどの機能的矯正装置やヘッドギア、チンキャップなど

矯正力の作用様式

 

 

 

 

 

今回の国試問題いかがだったでしょうか?

矯正力への理解を深めて、類似問題にトライしてみてくださいね。
また次回もお楽しみに!

 

<参考文献>

・日本医歯薬研修協会 Complete+DH 歯科衛生士 国家試験完全攻略2022年版p.435より引用。

 

・医歯薬出版株式会社 歯科矯正学 第5版 p.179180182183197199237240より引用。

ASOのパンフレットより引用。